心臓の疾患(病気)の中で、心拍数が一定でないことを「不整脈」と呼びます。

「不整脈」は大きく分けると、心拍数が遅くなる、または普段から遅い「徐脈性不整脈」(30~50回/分)と、心拍数が速くなる「頻脈性不整脈」(120~250回/分)があります。正常な安静時の心拍数は50~100回といわれています。

心拍数が遅くなる「徐脈性不整脈」は、息切れやめまい、突然脈が遅くなったときや心停止がおこると失神発作や意識消失といった症状が現れます。一方、心拍数が速くなる「頻脈性不整脈」は、動悸やめまいを起こす心室頻拍(120~250回/分)と心室が痙攣を起し心臓から全身に血液を送り出せなくなる心室細動(350回/分)があります。心室細動の発作に見舞われると意識を失い直ちにAED等で蘇生治療をしなければ命を失う事になることより、致死性不整脈といわれています。

これらの「不整脈」を医療機器により治療するのが不整脈のデバイス治療です。

徐脈性不整脈の治療

ペースメーカー植込み術

ペースメーカー植込み術は、心拍数が遅くなる「徐脈性不整脈」の治療方法です。

心臓は、電気刺激(極微弱な電流を流す)により拍動する臓器です。
ペースメーカーは、その原理を応用した医療機器で本体は縦横3~4cm・重さ約20gと小さく、電池と電子回路でできています。また、その電気刺激は1~2本のリード線で心臓に伝えられ、心臓に留めたリードから得る電気信号をもとに、徐脈を認識し心臓に電気刺激を送って正常な脈拍を保ちます。

これらを胸部やお腹の皮膚下に植込みますが、多くの手術は局所麻酔で行われます。
ペースメーカーを装着すると患者さんは健康な方とほぼ同じ生活を送ることができるようになります。

頻脈性不整脈の治療(心室頻拍、心室細動)

植込み型除細動器(ICD)植込み術

ICD植込み術は、心拍数が速くなる「頻脈性不整脈」のうち心室頻拍や心室細動など心室性の頻脈の治療方法です。

ICDはAED(自動体外式除細動器)と同じように、心室頻拍や心室細動を自動的に認識し治療を施す植込み型の医療機器です。大きさは縦横5~7cm・重さ約80gとペースメーカーよりやや大きな機器です。リード線は1~2本でペースメーカーと同様に心臓に装着しますが、ペースメーカーが極微弱な電流を流し脈拍を正常に保つのに対して、痙攣した心臓を正常の脈拍に戻すICDはペースメーカーの100万倍の電流を流す必要があるため大きくなってしまいます。

※ICD=Implantable Cardioverter Defibrilator

カテーテルを用いた不整脈の治療

カテーテルアブレーション術

カテーテルアブレーション術は、カテーテルを用いて「頻脈性不整脈」と呼ばれる不整脈を治療する方法です。不整脈発作の原因である心臓内の不要な伝導路(電気の通り道)をアブレーションカテーテルという機器を用いて切断します。
カテーテルアブレーション術には、カテーテル先端を熱くして焼灼する方法(高周波アブレーション)と、カテーテル先端を冷たくして冷凍凝固させる方法(クライオアブレーション)があり、熱を利用して心筋(心臓の筋肉)内の伝導路にダメージを与えます。心筋は一度ダメージを受けると元に戻らないため「頻脈性不整脈」の発作はなくなります。